日の出町坂本産単斜輝石岩

どーも、東雲鉱物科学研究所です。

 

今回は、2021年12月11日に、東京都の日の出町、坂本地域の大久野に鉱物採集に行ってきました。

最寄駅は、五日市線武蔵五日市駅です。

 

Googleマップだと、こんな感じです。

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川沿いの道を歩いて、行きます。

警察署を過ぎて、さかな園に行くまでの間に、川に降りられる道があります。

そこで、採集をしました。

 

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採集した場所を、上流を背中にして、撮影しました。

写真の通り、日があまり当たらない場所で、ジメジメしていました。

 

日の出町坂本は、名栗断層帯内部に位置し、同地域の蛇紋岩中には、単斜輝石岩の小岩塊が発見されています。

そのため、黒瀬川帯の要素である可能性を指摘されています。

黒瀬川帯の地質体は,クリッペ(地質作用により、古い地層が山の上に残されているということ)であると解釈されています。

黒瀬川帯に産する蛇紋岩は、元々はかんらん岩だったと言われています。

 

採集した河原は、様々な火成岩や、石英、様々な色彩のチャートが、多く見られました。

正直、これといった鉱物は、採集できませんでした。

ただ、チャートには、赤系統や、緑系統のものがあり、綺麗でした。

特に、緑系統のものは、非常に美しかったです。

 

単斜輝石岩とは、いわゆる輝岩と言われる岩石のことです。

パイロキシナイトと呼ばれ、全体の90%以上が輝石で構成されています。少量、かんらん石を含む場合もあります。

坂本地域で採集される標本は、大部分が単斜輝石で構成されているため、単斜輝石岩と呼ばれています。

かんらん岩も、輝石及び、輝岩も密度が高く、比重も重いため、地球深部のマントルを構成する岩石、鉱物です。

特殊な地質作用により、地上に現れますが、世界的に見ても、稀な現象です。

日本では、北海道のアポイ岳が、かんらん岩の産地で有名で、構造地質学の研究対象になっています。

 

前置きが長くなりましたが、採集した単斜輝石岩の紹介に、移りたいと思います。

 

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河原に緑色の岩石があり、チャートではなかったため、ハンマーで割った所、単斜輝石岩でした。

緑色が美しく、なかなか良い標本です。
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上、2枚の写真は、同一の標本を撮影したものです。

単斜輝石岩に、白色の鉱物が貫入しています。

石英か何かだと思いますが、良く分かりません。

近いうちに、鑑定に出したいと思います。

 

以上が、採集した標本の紹介でした。

 

本当は、紫色のローソン石や、柘榴石花崗岩、藍閃石片岩を探していましたが、露頭が分からずじまいでした。

 

参考文献には、露頭の場所が書かれており、私が登った場所よりも、もっと奥の山道みたいでした。

文献には、緯度経度が記載されているため、Googleマップで検索すれば、すぐに出てきました。

ただ、道には融雪剤が置いてあり、もう12月に登るのは難しいと判断しました。

 

ローソン石や柘榴石花崗岩の採集は、来年の宿題になりました。

 

私が採集できたのは、あくまでラッキーで、採集した場所には、これといった鉱物はありません。

融雪剤があるということは、これから雪が降るということです。

もし、文献の通りに行く場合は、気をつけて行ってきてください。

当ブログは、一切の事故や遭難に、関知しません。

自己責任で、登ってください。

 

ただ、久しぶりにいっぱい歩いたので、足が疲れて、夜は家の近所の銭湯に行ってきました。

 

今年は、行きたい鉱山に、行きたいだけ行ったので、満足しています。

また、来年の春から、鉱物採集に動き出します。

来年の春に、私の執筆した鉱物学の論文が、専門誌に掲載されます。

また、来年も論文を執筆するため、また忙しくなりそうです。

 

では、この辺で。

 

参考文献

東京都産古生代前期造山帯の断片:関東山地東部,黒瀬川帯高圧型変斑れい岩および花崗岩類のジルコン U–Pb 年代

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/126/10/126_2020.0026/_pdf